case.2

『………ッ!?』
目が覚めるとそこにあったのは、見慣れた自室の天井だった。
『………はぁ……』
寝癖で爆発した髪をぐしぐしと弄りながらアデルは顔を洗うため、浴室へと向かう。

見慣れた自室の光景。
見慣れた机、見慣れた椅子、ベッドから覗く見慣れた銀髪の頭…
いつもいつも、見ている。知っている。
それなのに、酷く懐かしく、尊く、それでいて、寂しいようだった。


それと何故か違和感がある………


もぞもぞ。

…………ん?

もぞもぞ。


……………頭ァ!?

アデルは再度自分が先ほどまで眠っていたベッドからその正体を引きずり出す。

『おい』
『…………』
銀髪のその物体は………
『おはようございます』
『おはようございますじゃねぇよそこに正座してろ』



アデルが顔を洗い戻ってくると、銀髪の物体は正座したまま待っていた。
『おはようございます』
『…………』
『…………』

『……ごめんなさいやめてください窓を開けないでくださいぃあぁ!?窓から!?窓から落とすんですか!?』
『……』
アデルは無言で銀髪の物体を睨む。
『無言の圧力は……流石に辛いので…』

銀髪の物体の正体は人間だ。
アデルよりも2ほど年は下であろう。
名は『アナ・チェーダ』。アデルが昔偶然出会った少女だ。
今ではここ、レギオンズΣのメンバーになっている。

『お前さ……なんで俺の部屋に侵入出来るんだ?』
アデルは彼女にそう質問する。
『そこにあなたがいるからです』
『やっぱ窓から投げ捨てる』



……さて、なにやら変なものがいたようだが………彼の紹介でもしておこうか。
彼の名は『アデル・デュランダル』。
レギオンズΣの『戦闘』の主力、一番隊の隊長だ。

『レギオンズΣ』についても、軽く紹介しておこう。

『レギオンズΣ』とは、一言で言えば『真の正義を求める世界最強のギルド』だ。
レギオンズΣはそのために団員を集め、活動している。
ギルドの団員にはある特徴がある。
人は『超能力』『異能力』などと呼ぶものを持った人間達が半分以上を占めている。
レギオンズはそういった人間を積極的に勧誘し、団員としている。
これは能力によって人間の格差などが起こらないようにする、という目的もあるのだ。

だが、中には自分の私利私欲のためにレギオンズの名を使う輩や、レギオンズを乗っ取り力を得ようとする者もいる。
アデルは、そういった人間を取り締まり、時に『始末』する。レギオンズの活動を阻む可能性を取り除き、悪への抑止力となる。
それがレギオンズΣの正義の一つ…『力の正義』だ。

『さて、仕事しよう、働かざるもの食うべからず、だ』
アデルは制服に身を包む。
一番隊隊長の制服。レギオンズの『力の正義』の象徴。
白いローブのようなデザインで、左胸には『Σ』の文様が刻まれている。
自然と気が引き締まる。
アデルの1日はここから始まる。







さぁ、この世界で…彼の正義は、力は、希望は、どうなるのかな。
彼の信じる『正義』、見せてもらおう。

え?僕が誰かって?
いやだなぁ………
そんなこと気にしないで、僕と一緒に彼の紡ぐ物語を楽しもう。

それに、


もう、僕自身の自己紹介は済んでいるはずだ。